今回は、「イナゴ」という投資用語について紹介します。
「イナゴ」は、投資用語として仮想通貨以外でも使われている言葉ですが、最近では、仮想通貨界隈で、よく聞かれるようになってきました。
2017年の年末にかけて、仮想通貨全体の相場が急騰したのは、この「イナゴ」の影響が大きかったといわれています。
昆虫のイナゴの生態
「イナゴ」とは、イナゴ科(Catantopidae)に属する「バッタ類」の総称です。
「イナゴ」は、日本では、昔から、稲を食べる害虫とされてきました。
また、水田から得られる重要なタンパク源として、多くの地域で食用とされてきました。
「イナゴの佃煮」などの食べ方が、一般的な食べ方です。
「イナゴ」は、
「秋になると一斉に繁殖して、大群で飛んできて、稲穂に群がり、食い尽くして飛び去っていく」
という性質を持っています。
投資用語としての イナゴ
ある特定の銘柄について、SNSなどで情報を知った個人投資家たちが、その情報を材料として、一斉にその銘柄を取引することにより、特定の銘柄の価格が、急騰・急落を引き起こすことがあります。
このような個人投資家たちの、突然、現れて利食いをした後は、すぐ別の銘柄に当たるという投資行動を、「秋になると一斉に繁殖し大群で飛んできて、稲穂に群がり食い尽くし飛び去るイナゴ」に例えて、投資関係者やツイッターなどのSNSでは、「イナゴ投資家」や「イナゴトレーダー」などと呼ばれます。
最近では、省略して、単に「イナゴ」と呼んでいることが多いです。
イナゴタワー
「イナゴ」による取引によって、その銘柄にとって、好材料なら価格が暴騰した後に、一転して急落するというような値動きをします。
この一連の値動きをチャートにした時に、暴騰と急落の動きがタワーのような形をしていることから、「イナゴ」がつくるタワーということで「イナゴタワー」と呼ばれています。
「イナゴタワー」が形成されると、結果的に暴騰前の価格を割り込む水準まで価格が暴落し、しかも暴落した価格が、暴騰前の水準まで戻るのにも、かなりの時間がかかるということも、少なくありません。
イナゴの種類
「イナゴタワー」を形成する「イナゴ」にも、いくつかの種類があるとされています。
今回は、9種類の「イナゴ」を紹介します。
これは、読むだけでも、かなり面白いです。
高速イナゴ
銘柄に関する材料となる情報が出るやいなや、内容の確認などはせず、とりあえず飛びつき取引を行います。
他の「イナゴ」が、乗り遅れる銘柄の暴騰に間に合うという点で強みがある一方、さして材料とならないような内容の情報も少なくないことから、結局のところ「損切り」で終わることの方が多いとされます。
また、稀に後述の「共食いイナゴ」に変化します。
下級イナゴ
しかし、その分析能力は極めて低く、「凄そう」という程度の理由でも飛びつき取引します。
情報分析に時間がかかる分だけ、「高速イナゴ」に比べて、「乗り遅れる」ことも多いことから、後述の「共食いイナゴ」の「エサ」になる場合も多いです。
上級イナゴ
情報精査に関する能力が、格段にアップしており、無駄打ちが少ないのが特徴です。
あえて、他の「イナゴ」たちが荒らした後に入ることも多いですが、その分、乗り遅れることも多いことから、「イナゴ心」を忘れてしまった「イナゴ」とされています。
養分イナゴ
価格の上昇が終わった銘柄に飛び乗って、皆にお金をばらまいています。
自分が損した銘柄の、情報提供者への怨恨は、凄まじいものがあります。
後述の「煽りイナゴ」に進化することもあります。
神風イナゴ
イナゴタワーのトップ、節目付近の、誰がどうみても崩壊直前で、多くの買いを入れてきます。
「神風イナゴ」が現れた時点で、タワーの崩壊が確定します。
「神風イナゴ」は、仮想通貨界によく出現します。
煽りイナゴ
ただお金をばらまくだけだった「養分イナゴ」が、執拗な買い煽りを繰り返し、皆を巻き込もうとするという特殊能力が備わった、迷惑極まりない「イナゴ」のことです。
共食いイナゴ
誰よりも早く乗った銘柄を、遅れてきた「イナゴ」に売りつける「イナゴ殺し」の「イナゴ」です。
昨今、このタイプの台頭が凄まじく、高騰銘柄が長続きしない元凶とも言われています。
「共食いイナゴ」は、別名「ババ抜きイナゴ」とも言われます。
反発イナゴ
「イナゴタワー」崩壊後に発生する、強烈なリバウンドだけを狙って、他の「イナゴ」を食い物にします。
どの価格で、どの程度のリバが発生するか予測出来る、熟練の「イナゴ」であり、わずか数秒~数十秒の価格変動で、ポジションを変える能力を持っています。
殿様イナゴ
特定の掲示板などで崇拝されている「イナゴ」で、他の「イナゴ」たちとは違い、あえて先に特定の銘柄を仕込み、その後、銘柄名を叫ぶことによって「イナゴ」たちを飛びつかせる手法を取ります。
叫んだ銘柄は必ず騰がるので、負け知らずの、名実ともに最強「イナゴ」です。
以上、イナゴの種類については、ウィキペディア「イナゴタワー」を参考にしています。
イナゴ焼き にご用心
相場に「イナゴ」の大群が押し寄せると、チャートは、大きく値上がりして「イナゴタワー」を形成します。
このようなチャートをみると、人は、ついつい欲に駆られてしまい、
と思い、飛びついてしまいます。
そして、飛びついたあなたが、まさにイナゴのひとりというわけです。
その「イナゴタワー」が、さらに上に伸びているときは、問題ありません。
しかし、「イナゴには、一斉に集まり、一斉に去っていく」という性質があります。
その「イナゴ」たちが、去っていく瞬間に気が付かないと、チャートの中にとり残されてしまい、大きな損失を被ることがあります。
これを、
「イナゴ焼き」
といっています。
「イナゴ焼き」とは、一般的な投資用語でいえば「高値掴み」のことですね。
まさに、「買った瞬間に値下がりする」という、誰もが経験したことのある、あの恐ろしい現象です。
上がっていくチャートをみて、焦って「イナゴ」となって飛びいた瞬間に、「イナゴ」の大群が去ってしまい、自分だけ取り残される。(あ〜なんて恐ろしい…)
こうなると、早めに「損切り」するか、相場が戻るまで「ガチホ(塩漬け)」するかしかなくなります。
「イナゴタワー」にとり残されると、「平均購入価格を下げているんだ!」という、都合のいい言い訳をしながら、「ナンピン買い」を繰り返したくなります。
結果的に、相場が戻ればいいのですが、もしも、戻らなかったら悲惨としか言いようがありません。
「イナゴ」が襲来した後には、少なからず「イナゴ焼き」も発生しますので、初心者の人は、くれぐれも安易に「イナゴタワー」に飛びつかないようにしたいものですが、それができれば苦労はありませんね。
しかし、何事も経験です。
いちど「イナゴタワー」に飛び込んでみれば、次からは、多少、冷静に判断できるようになるでしょう。
また、再起不能にならないために、勇気ある撤退(損切り)も必要です。
投資において、「損切り」は、かなり重要な要素です。
イナゴタワーの形成と違法性
最後に、イナゴタワーを形成させようと、ツイッターなどのSNSに投稿する行為の違法性について、触れておきます。
これについては、ある弁護士は、
と、相場操縦の観点から指摘しています。
また、ネット上に散見される、明らかにデマと思われる中傷や、買煽りについては、
との指摘もあります。
インターネットが普及する以前は、仕手筋と呼ばれる集団が、セミナーや電話などを通じて時間をかけて株価などを動かそうとしていましたたが、現在ではこれと同様の行動を、ツイッターなどを用いて「個人が罪の意識もなく平然と行っている」との指摘もあります。
おわりに
投資を始めると、「いつも自分が買うと値下がりする!」という経験を、誰もがしたことがあると思います。
私も、「思ったことと、反対の注文を入れた方がいいのではないか?」と、いつも思ってました。
そんな私は、「下級イナゴ」といったところでしょうか(笑)
しかし、レバレッジをかけずに、現物を買い、コツコツと「ナンピン買い」を続けた結果、含み損も減少に転じ始めましたので、ここからが楽しみです。
まったくリスクを取らなければ、損をすることはないかもしれませんが、当然、利益を享受することもできません。
ただ、自分は、どの「イナゴ」になる傾向が強いのかということを、いちど冷静に見つめてみることも、必要かもしれません。
今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。
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