フランスのパリにある、最先端のがん研究所では、乳がんの早期発見を、犬の嗅覚によって嗅ぎ分ける研究が進められています。
犬の嗅覚を使って、乳がんを見つけるということですが、具体的にはどうやって見つけるのでしょうか。
また、研究は、どこまで進んでいるのでしょうか。
研究方法
研究方法は意外と単純です。
検査に必要なものは、ガーゼと瓶、そして、匂いのしない石鹸です。
研究は、検査対象の女性から、乳房の匂いを付着させたガーゼを集めて行います。
女性は、匂いのしない石鹸を使って、よく洗った乳房に、ガーゼを当てて一晩眠ります。
そして翌朝、ガーゼを瓶の中に入れて、研究所に送ります。
その匂いを、犬に嗅ぎ分けさせるというのです。
ガーゼには、女性の体臭と、もし乳がんにかかっているならば、がんの腫瘍の匂いが、ガーゼに付着しているそうです。
そして、ガーゼを犬に嗅がせることで、その女性が、乳がんにかかっているかどうかを調べるのです。
乳がんなどの腫瘍には、特有の匂いがあるとされいます。
その人間には感じることのできない、ごくわずかな臭いを、犬の嗅覚で嗅ぎ分けようというのが、この研究の目的です。
犬の嗅覚は、人間より100万倍とも、1億倍とも言われるほど優れていると言われています。
気になる成功率は?
この研究は、パリの最先端のがん研究所で、およそ9年前から始まり、警察犬などに用いられるシェパードが、研究に使われています。
犬は、いちど覚えた匂いを、訓練している限り忘れないといいます。
この特性を利用して、がんの匂いを嗅ぎ分けさせます。
その成功率は、
乳がん患者と、健康な女性100人のサンプルを使った実験では、
9割以上の確率で、乳がん患者のガーゼを、見つけ出すことに成功しています。
と、まずますの結果のようです。
最も女性がかかるガン
世界中で、最も女性がかかるガンと言われるのが、乳がんです。
しかし、乳がんの検査を受診しているのは、日本やフランスなどの先進国でも、女性全体の4割台にとどまっています。
そして、発展途上国の女性にいたっては、ほとんど人が受診していないそうでう。
がんの治療には、早期発見が大切です。
しかし、手間や検査機器が必要なため、多くの人々が検査できない現状があります。
しかし、身近な動物である犬を使うことで、大掛かりな設備がない発展途上国の女性でも、検査を受けられるようになるかもしれません。
研究はどこまで進んでいるのか
さて、この研究は、どこまで進んでいるのでしょうか?
現在では、まだ、匂いを嗅ぎ分ける精度を高めるために、犬の訓練をしている段階のようです。
訓練中の犬は、乳がん患者と、健康な女性、およそ400人から集められたガーゼを使って、日々、訓練を行っています。
具体的な訓練の方法は、
犬は、順番に並べられたガーゼの匂いを嗅いで、もしも、乳がん患者のガーゼがあったら、その前で止まります。
もしも、並べられたガーゼの中に、乳がん患者のものがなければ、それらの前は通り過ぎ、近くに置かれた台の上に座ります。
犬が嗅ぎ分けに正解した場合は、特定の音を鳴らして、褒めてあげます。
並び順を変えたり、別の患者から集めたガーゼを入れ替えたりして、訓練を重ねています。
2018年の末までには、新たに、全く検査を受けていない350人の女性からガーゼを集め、実戦さながらの、乳がんの匂いを探す実験が行われる予定になっています。
そして、早ければ、2019年中には、アフリカのマリなどで、現地の女性を対象にした実地検査を行いたいということです。
おわりに
犬以外にも、生物の嗅覚を借りて、がんを早期発見する試みが、盛んになっています。
日立製作所は、植物などに寄生する 線虫 を使い、患者の尿成分から、がんを見つける技術を開発し、2020年には実用化する予定です。
また、山形県の金山町でも、犬に尿の臭いをかがせて、異常を見つけさせる実証試験が進んでいます。
いずれも、手軽にできる検査手法として、早期の普及が期待されます。
今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。
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