旅行会社のエクスペディア・ジャパンの調査によると、日本の有給休暇の取得率は50%で、世界30カ国の中で2年連続最下位となっているようです。
日本に次いで、消化率が低かったのは、お隣の韓国で、67%でした。
韓国以下は、インドが75%、イタリアも75%、、アメリカが80%、メキシコが86%と続いています。
一方、ブラジル・フランス・スペイン・オーストリア・香港の取得率は100%だということです。
そして、このほど日本では、年次有給休暇(有休)の制度が変わります。
いったいどのように変わるのでしょか。
なぜ日本人は休まないのか
休まない理由
日本人が、休みを取らない理由としては、
2位 … 人手不足
3位 … 職場の同僚が休んでいないから
という結果でした。
私は、これは、3位以外は建前で、本心は違うところにあると思います。
それについては、後ほど意見を書かせて頂きます。
罪悪感を感じるか
有給休暇の取得時に罪悪感を感じるか?
という質問に対しては、
・韓国 … 61%
・シンガポール … 35%
・アメリカ … 31%
・香港 … 31%
という結果でした。
長期間休めるか
休みを取る際にも、「長期間休みづらい」と考え、短い休暇を複数回に分けて取る人の割合も、日本は49%と最多でした。
また、「休暇中も仕事のメールを1日中見てしまう」という日本人の割合も、22%でトップでした。
*これらの調査は、9月4~15日にインターネット上で実施され、30カ国の計1万5081人が回答。
働き方改革関連法案
「高度プロフェッショナル」制度導入や、残業時間規制ばかりが注目されている「働き方改革関連法案」ですが、法案には、年次有給休暇(年休)取得の義務化と違反した場合の罰則導入も盛り込まれています。
これは、
中小企業を含めたすべての企業が、2019年4月からその対象となります。
すでに、働き方改革の一環で、労働基準法が改正されました。
過重労働を防止して、休むときはしっかり休んで仕事の生産性を高めるのが、今回の法案の狙いです。
SNS上では、
などと、期待する声がある一方、その実効性を疑問視する声も上がっています。
私も、疑問視しています。
違反した企業に罰則はあるのか
罰金が、違反1社当たりなのか、1件当たりなのかは、いまのところ明示されていません。
もし違反1件当たりで罰金を科す場合、例えば、従業員500人の有休消化義務を怠った企業の罰金は、30万円×500人分で最高1億5千万円にも上ることになります。
一方、1人でも、500人でも、罰金が同じ30万円であれば、「敢えて罰則を受ける」という選択肢も生まれてしまいます。
参考になる好事例
IT(情報技術)ベンチャーの「ロックオン」(大阪市)は、土日を含む9日間の連続休暇の取得を義務付けています。
翌年の予定を、職場単位で調整して決めます。
社員は、思い思いに休暇を過ごし、リフレッシュしているそうです。
ユニークなのは、休暇中の連絡を一切禁止していることです。
そのため、実際に山にこもるわけでないですが、社内では「山ごもり休暇」と呼んでいます。
担当業務がどんな状況にあるか、懸案は何かなど仕事の棚卸しを、休暇前に全員がします。
このプロセスが、無駄な業務に気付いたり、仕事の属人化を防いだりする効果も上げています。
有休が取りにくい職場風土は問題ですが、働く側も効率的に働く意識が必要です。
会社と働く側の双方が、業務の中身や進め方を見直さないと、有休の取得は進みません。
海外は連続休暇が基本
有休取得率の向上のため、時間単位の有休取得制度を導入する企業が、最近目立ちます。
学校の行事や通院など、1日休むほどでもない私用があるとき、有休を1~2時間に分割して取れるという制度です。
用事があるときに、絶対に抜けられないよりも、便利な制度だと思う半面、なぜ、丸々1日休もうとしないかが不思議です。
日本は、この条約を批准していませんが、ドイツやイタリアなど37カ国は、これに批准しています。
これらの国々では、バカンスが定着し、長期の休みを労働者は堪能しています。
有休義務化 課題の本質
出世競争
「勤勉が美徳とされる日本人は、休み下手のようだ。」
というのが、よく見かける、大方の意見ですが、
「日本人が休まない理由」のところでも書きましたが、私は、それは建前だと考えています。
有給休暇だけの問題ではなく、残業についても同じことが言えますが、
というのが、最大のポイントです。
これは、協調性うんぬんの話ではありません。
つまり、
自分だけ残業しないで先に帰ったら…
または、
自分だけ有給をしっかりと取ったら…
普通の人はどう考えるでしょうか?
「あいつは…」と、ちょっと仲間から浮いた存在になるということもありますが、それくらい大したことではありません。
それよりも、自分の能力とかは度外視して、
自分だけ出世競争から脱落してしまうではないか!
と多くの人は、無意識的に考えると思います。
これが、多くの人がサービス残業をやめなかったり、有給を取らなかったり、連続休暇を取らない最大の理由だと思います。
営業職
もうひとつ忘れていけないのが、営業職の営業目標です。
多くは、対前年比で100%以上の営業目標(ノルマ)を課せられます。
前年が相当悪くないかぎり(前年も相当努力しているはずなので)、当然、休んでいる暇なんてありません。
サクッとノルマを達成して、連続休暇を取れるような人は、よほど優秀な人だけです。
多くの場合、毎日、ギリギリの努力をして、やっと達成できるような目標が設定されます。
容易に達成できるような目標は、目標とは言えません。ただの計画です。
そのため、普通の人は休んだ瞬間に、目標達成は諦めることになります。
前年に有給を取得していない場合、有給を取得しただけで、前年の実績にすら、届かない可能性も出てきます。
そんな数字では、当然、評価は低くなり、その結果、ボーナスの査定も低くなります。
そして、出世も…
つまり、会社員になったら、多くの場合、走り続けるしか道はないのです。
そんな状況で、自分だけ「9連休を取得して南の島でバカンス♪」なんて、誰がするでしょうか?
「うさぎとカメの童話ではありませんが、みんなが歩みを止めないのに、自分だけ昼寝できますか?という話です。
ということで、
「サービス残業がなくならない」「有給休暇の取得率が低い」などの本質的な要因は、「人手不足」や「まわりに迷惑がかかるから」などという表向きの理由ではなく、「自分だけ出世競争から脱落してしまうではないか!」という不安だと、私は、思っています。
なぜそう思うのか
なぜ、そう思うのかと言うと、
私自身が以前は、そんなこと意識してはいませんでしたが、いま思うと、無意識的にそのように考え、サービス残業をしていたと考えられます。
定時で帰るなんて、考えられませんでした。
当然、有給休暇なんて取ったことがなく、常に年間40日の残日数がある状態でした。
そして、有給休暇は、40日以上は増えないので、それ以上は、毎年捨てていたことになります。
これは、お金を捨てていたのに等しいことです。
なぜなら、仮に、その日数分の休暇を捨てずに、きちんと取得して、どこかでバイトでもすれば、十数万円は稼げたことになります。
表向きには現れない数字ですが、十数万円 ✕ 年数分のお金を、これまで捨てていた計算になります。
多少無理をしてでも、頑張った分だけ収入が増えてくれれば、まだいいのですが、実際には、たいして収入は増えず、それよりも体調を崩す確率の方が高いくらいです。
おわりに
ということに気がついて、出世を一切、目指さなくなってからは、
定時で変えるのは当たり前。
有給を取得するのは当たり前。
連続9連休なんて当たり前。
と思えるようになり、実際に実践しています。
しかし、定時に帰るためには、徹底してムダな時間を省くなど、それなりの工夫と努力も必要です。
しかし、多くの人にとっては、これは難しい選択だということも、よく分かります。
特に、家庭があったり、多額の住宅ローンがあったり、子供の教育費が必要だったり…、残業してでも、有給取得どころか、休日を返上してでも…という思考が働くのは、当然かもしれません。
では、どうすればいいのか?
ということは、ここでは敢えて書きませんが、「残業が減らない」「有給休暇の取得率が上がらない」という問題の本質は、「自分だけが、出世競争から脱落するわけにはいかない」という恐怖心ではないかと、私は考えています。
実際には、出世できない人のほうが多いのにもかかわらずです。
こんなことを考えている私は、矢沢永吉さんの「アリよさらば」という曲が大好きです。
みなさんも、いちど聴いてみては如何でしょうか?(アリだと気持ちが悪いので、画像は羊にしました。)
今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。
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